イギリスが誇る巨匠ヘンリー・ムーアは、20世紀を代表する彫刻家のひとりである。彼の作品を抽象と呼ぶか具象と見るかはさておき、彼が執拗にこだわりつづけた主題が「横たわる人体」をはじめとする具体的なものであったのは確かである。この作品も一連の人体像のひとつで、単純化された凸面と凹面の構成によって格調高いハーモニーを奏でている。
1898年、イギリス中部のカッスルフォードに生まれる。リーズ美術学校を経て、1921年王立美術学校に入学、1924年には同校彫刻科講師に就任する。それ以降の世界的な活躍は衆知のとおりである。1946年にニューヨーク近代美術館で初の大回顧展開催。世界中の称賛をあびつづけるなか、1986年に88歳で世を去った。